2008-08-02

床屋が嫌いだった

昔は、床屋が嫌いだった。

何が嫌いといって、全部が嫌い。変なエプロンを掛けられじっとしてなきゃいけないのも、変な臭いの液体を振りかけられるのも、目の前やのど元に刃物をつきつけられるのも、熱い泡を鼻の下に塗られるのも、肩を揉まれるのも、自分自身の鏡像を見るのも(自分自身の写真なら平気なんだけど、鏡像は違和感ありまくり)。

とりわけ嫌いだったのが、おしゃべり。こちらが逃げられない体勢に入るやいなや、床屋の親父はどんどん個人情報にかかわる質問をしてくる。刃物を手にもっているから、ご機嫌をそこねたらたいへん。答えざるを得ない。

というわけで、床屋にはなるべく行かないという人になってしまった。切るときはすごく短くする。すごく長くなったら、いやいや切りに行く。

個人情報に関する問題点は、「同じ床屋へ通う」という手段で解決することにした。なんと、もう25年以上、同じ床屋へわざわざ通っていることになる。住まいや職場はその間、各地を点々としているのに。親父が一人でやってる店なので、「いつものように」というだけで仕上がりの髪型も一定になる。いろいろ好みを説明したあげくのはてに、変な髪型にされる危険性は無い。

実は、今日、その床屋へ行って来た。嫌いじゃない。これだけ馴染みになっていると、もう、おしゃべりは人生相談みたいなもの。こちらからどんどん個人的な話をしてしまう。床屋のご主人も、店自体も、古くなったなあ。いつまでも同じ場所で頑張って営業して欲しい。「また来ます」と約束して、店を後にしてきた。

「嫌い」ってのも向こう側へ突き抜けてしまえば、平気になるんだな。何事もそうかも。

ツンデレってやつか?
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