27FEB2000

毎年1回。今年は今日が古い知人と会う約束の日だった。

20年近い昔の思い出で、こんな話を私が出した。

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第1の事件：T.A.君

T.A.君は国立T大学大学院の学生だった。ある日、女性の声で
「あなたの実家から番号をきいた」
と電話がかかってきた。内容は
「真剣に、結婚を前提としたおつきあいをしたいので、ぜひ一回、会って下さい」
ということだった。 T.A.君は会うぐらいならいいだろうと、待ち合わせの場所と時間を決め、電話を切った。

さて、当日。約束の時間が迫って来た。どうも、なんだか恐い。変な宗教だったり、マルチ商法だったりすると断るのが大変かもしれない。そうだ！いとーさんに付き添ってもらおう。彼ならそういうのに強そうだ。

というわけで、依頼を受けた私と待ち合わせ場所のT大農学部正門へ2人で。

門の中央にオレンジ色の上下に身をつつんだ、けっこう年上の女性が仁王立ちし、行き交う人と目を合わせようとしている。この人だ、と思ったのだが、 T.A.君も私も気後れして門を通過。でも、考え直して今度は後ろから、あー、やっぱりだめだ。通過。

3回目で、ついに意を決した T.A. 君が「あのー、私が T.A. ですけど、○○さんですね」と声を掛けた。

彼女が、いい喫茶店がある、というのですぐそばのその店へ。ちょうど昼食時だった。

気配に押されて、我々は食べる気にならないので、コーヒーだけ注文。彼女は当然のように「カレーライス、フライドチキン、コーヒーね」と。

おずおずと、どうして電話したのか、とか、実家の番号はどこで知ったのかを質問してみた。「前に会った小学校の先生に国語教育研究会に連れて行ってもらって、名簿を貰った。その名簿の人に電話を掛けて会っていたら、T大の卒業生名簿を貰った。今はその名簿で順番に電話を掛けている」と。えっ、名簿の上から順番に？「そう」学部とかそういうのは？「関係ない」。

そんな話をしているうちに、注文の品が運ばれて来た。彼女は貧乏ゆすりしながらガツガツと食べ始めた。唖然としている我々に、口の中に食べ物がいっぱい入ってるのに、大声で「なんで2人で来た？」「おまえはいい男じゃない」などと叫ぶ。

彼女が食べ終わるのをまって、即、さようなら。

なんだったんだろうね、と T.A. 君と私と話しながら学内へ戻った。もちろん、この変な女性の話は周辺の人にもした。皆、ふーん何なんだろうね、という感想だった。

この出来事を忘れかけたある日、第2の事件が起こった。

第2の事件：S.I.さん

S.I.さんはT大で助手をしていた。

「いとー君いとー君」。彼が廊下を走って来た。「僕の所についに来たよ。結婚を前提におつきあいの○○の電話が」。

名簿順に電話をしているのだからいつかは電話がいくはずだが、"あ" から始まって "い" の終わりの方へ到達したらしい。（ちなみに、私は名簿には載ってないので電話はかかってこない。）

これから会うから、終わったら報告するからね。と言い残して、 S.I.さんは出て行った。

後で彼に話を聞いたら、第1の事件とまったく同じだったそうだ。「あんなに食べ方の汚い人って居るんだね」というのが S.I.さんの感想だった。

その後

同じくT大助手のK.K.さんにも電話が掛かって来た。彼は上の2つの事件を知っていたので会うのを断った。名簿の "か" に到達。

私の友人のI.S.さんにも電話が掛かって来た。名簿の "さ" に到達。下の名前は "泉" だ。「泉さんは居られますか？」と電話の声。泉さんは「はい。わたしですが」と答えた。ガチャ、いきなり電話が切れた、のだそうだ。そりゃそうだ。泉さんは女性だから。

名簿のどこまで同じことが繰り返されたのかは知らない。知りたくもない。

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今日こんな話題にしたのは、つい最近、似たような事件がまた起こったから。ついつい古い話を思い出して、こんな機会に出してしまった。

肩書きだけで順番に「真剣な交際相手」を探すのはやめましょう。感性とか流れとかそういう生き物としての勘のほうが、とっても大切。（笑）

[上の写真：「試食失敗」at I. Ani, Ogasawara, Japan.]