2009-02-18

山上復有山

注意:以下の話は、根拠が薄弱だし、応用が他にきくわけでもない。

言ってみたいたわごとが今回は2つある。



まず、1番目。
[例外] タイ語の บ の文字は稀に1文字で bɔɔ と読む
と、冨田辞書にある。例えば、บริษัท (会社) は bɔɔrisàt と発音する。

この例外の真の理由は u の長母音の記号と図形が共通だからだ。

タイ文字はインド系の文字なので、多重子音を足文字やら合字で表す記憶が、古の人にはあった。実際、いくつかのタイ文字には足文字ふうに造字された痕跡がある。

บ の字の一字再読で บบ。 2文字目は足文字にしちゃう。ほうら、PAU- が見えてくる(古は、 บ は PA だった)。
「子音 P (現在は b)、母音は AU の短母音 ɔ を長音で発音してね」
で bɔɔ となる。

2番目。同じく、冨田辞書に
[例外] 綴り ทร は稀に2文字で s と読む
とある。

この例外の真の理由は ส の諱字(いみじ) だからだ。
(諱【キ (ク)、い-む】はばかることがあって言わないことや、話題にしたくない事情 --- 漢字の辞書 "漢字海" 三省堂より)

s を表すタイ文字4つはすべて他の文字に短い線や装飾を追加して造字されている。とくに、 ค บ ล の3つの字には短い線を追加する方式が採用された。実は、たとえばデーヴァナーガリー文字でも、対応する3字 ग प ल に短い線を追加すると s に近い音を表す字 श ष स になり、3字はタイ文字の ศ ษ ส にそれぞれ対応する。つまり、これはインド系文字で普遍的に採用されている方式なのだ。

ところで、2重子音に含まれる r の音は、インド系文字の多くで、もう一方の子音字に短い線を追加することで表される(☆)。 ส の古字体は、もちろん ล の古字体に短い線を追加した形をしているのだが、 ท の古字体に直後の子音 r を表す別の短い線が追加されたようにも見える(右図参照)。

さて、どういうわけかタイでは ส の字は "縁起が悪い" とされている。今、 ส の字を含む単語を記す必要があるのだがそういう事情で絶対に ส の字を書きたくない。相応しい類語が見当たらないので言い換えで ส を避けることはできない。そこで、 ส から r に見える線を除去し ท とし後ろに ร を独立させて書き足すことにした。

☆:たとえば、 ท に対応するデーヴァナーガリー文字は द で、 ทร に対応する2重子音の合字は द्र だ。

あっ、辞書の冨田氏の冨も、富の諱字だった。

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