2009-03-02

Lorem ipsum の "日本語訳"

2009年2月27日のエントリで自分に "Lorem ipsum dolor sit amet" の呪文を唱えてしまったようで、関連事項を調査せずには居られなくなってしまった。この呪文に関しては Wikipedia にかなりの情報があるので、今回はそれを補う形で調査結果を記すことにする。

--- (ここからしばらくは Wikipedia にもある情報だよ。)

下で、先に示すのが、greeking にしばしば使われるダミーテキスト、つまり、レイアウトを示すための埋め草として使われる無意味なテキストだ。後に示すのがそのネタになったラテン語の原典(2つの段落)だ。

Greeking 用ダミーテキスト:

Lorem ipsum dolor sit amet, consectetur adipisicing elit, sed do eiusmod tempor incididunt ut labore et dolore magna aliqua. Ut enim ad minim veniam, quis nostrud exercitation ullamco laboris nisi ut aliquip ex ea commodo consequat. Duis aute irure dolor in reprehenderit in voluptate velit esse cillum dolore eu fugiat nulla pariatur. Excepteur sint occaecat cupidatat non proident, sunt in culpa qui officia deserunt mollit anim id est laborum.

[凡例: 太字は2つのテキストに共通でない部分、下線は2単語が1単語に合成された部分を表す]

Marcus Tullius Cicero, De Finibus Bonorum et Malorum, Liber Primus (45 a.C.n.):
[32] Sed ut perspiciatis, unde omnis iste natus error sit voluptatem accusantium doloremque laudantium, totam rem aperiam eaque ipsa, quae ab illo inventore veritatis et quasi architecto beatae vitae dicta sunt, explicabo. nemo enim ipsam voluptatem, quia voluptas sit, aspernatur aut odit aut fugit, sed quia consequuntur magni dolores eos, qui ratione voluptatem sequi nesciunt, neque porro quisquam est, qui dolorem ipsum, quia dolor sit, amet, consectetur, adipisci velit, sed quia non numquam eius modi tempora incidunt, ut labore et dolore magnam aliquam quaerat voluptatem. ut enim ad minima veniam, quis nostrum exercitationem ullam corporis suscipit laboriosam, nisi ut aliquid ex ea commodi consequatur? quis autem vel eum iure reprehenderit, qui in ea voluptate velit esse, quam nihil molestiae consequatur, vel illum, qui dolorem eum fugiat, quo voluptas nulla pariatur?
[33] At vero eos et accusamus et iusto odio dignissimos ducimus, qui blanditiis praesentium voluptatum deleniti atque corrupti, quos dolores et quas molestias excepturi sint, obcaecati cupiditate non provident, similique sunt in culpa, qui officia deserunt mollitia animi, id est laborum et dolorum fuga. et harum quidem rerum facilis est et expedita distinctio. nam libero tempore, cum soluta nobis est eligendi optio, cumque nihil impedit, quo minus id, quod maxime placeat, facere possimus, omnis voluptas assumenda est, omnis dolor repellendus. temporibus autem quibusdam et aut officiis debitis aut rerum necessitatibus saepe eveniet, ut et voluptates repudiandae sint et molestiae non recusandae. itaque earum rerum hic tenetur a sapiente delectus, ut aut reiciendis voluptatibus maiores alias consequatur aut perferendis doloribus asperiores repellat.

[凡例: 下線部は2つのテキストに共通な部分。ただし、大文字小文字 ? . は同一とみなした]

--- (ここまでは Wikipedia にもある情報だった。)

Cicero の著作には日本語訳が出ている。上のラテン語原典に対応する部分の日本語訳を次に引用しておく。

キケロー 著, 永田 康昭, 岩崎 務, 兼利 琢也 訳「キケロー選集 10 哲学 III」岩波書店 (2000/3), 善と悪の究極について (第1巻) :
[32] しかし、そういった快楽を非難し苦痛を賞賛する人々の誤りがすべてどこから生じてきたのか、その原因をご理解いただくために、学説の全体像を明らかにし、あの真実の発見者でいわば幸福な生活の建築家でもあられる方によって語られた数々の教えをそのままお示ししたいと思います。
 快楽そのものを、それが快楽であるという理由で、嫌厭したり憎悪したり忌避したりする人は一人もいません。もしいるとすれば、それは、理性的に快楽を追求する術を知らない人々を、あとから多大の苦痛が襲うからにすぎません。同様に、苦痛そのものを、それが苦痛であるという理由で、愛し、探し求め、手に入れようとする人も一人もいず、もしいるとすれば、それは、時によって、苦労や苦痛を通じて何らかの大きな快楽を求めるような機会が訪れるからにすぎません。もっとも卑近な例を挙げるとしますと、苦しくてつらい身体の訓練を、それによって何らかの益を得るため以外の理由で、耐え忍ぶ人間が私たちの中に一人でもいるでしょうか。また逆に、何一つあとで困るような結果をともなわない快楽を享受しようとする人を、またいかなる快楽も生まない苦痛を避けようとする人を、誰が正当な理由をもって批判することができるでしょうか。
[33] しかし、その一方で私たちは、目の前の快楽に誘惑されて堕落して惰弱になり、将来自分がどのような苦痛を、またどのような厄介を背負い込むことになるか、欲望に目がくらんで予見できなくなっている人々のことを非難し、また人から憎悪されて当然のように思います。また、精神が軟弱なために、つまり苦労と苦痛から逃げたい一心で、義務を放棄する人々も、同様の責めをこうむります。そのような善き事態と悪しき事態との区別は容易に、そしてただちにつけることができます。私たちは、自由なときには、つまり私たちがいかなる拘束も受けずにものごとを選択できる状態にあるときとか、妨げるものが何もなくて自分のいちばんしたいことをすることができるときとかには、すべての快楽を迎え入れるべきですし、またすべての苦痛を退けるべきです。しかし、それ以外のある種のときには、義務を果たすためとか諸般の必要に迫られるとかして、快楽を遠ざけ進んで厄介事を引き受けなければならないことがしばしば出てきます。ですから、そのような場合、賢者は、快楽を拒否することによってより大きい別の快楽を確保する、あるいは苦痛を耐え忍ぶことによってより大きい苦痛を防除するという原理に常に従いながら行動を選択しているわけです。


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さて、実は、今回の調査の真の目的は、上の日本語訳を原典として、「日本語 greeking」(変な表現w)に使える下記ダミーテキストを作ることだった。でたらめに作ったのではなく、 ラテン語→greeking の "対応" と ラテン語←→日本語 の "同型" を利用して作ったよ。

日本語 greeking 用ダミーテキスト:
古痛そのものを苦痛であるとで愛し、探し求め手のれよう、もしどば苦労や苦痛を通じて何らか大きうな機会ぢ訪れ。もっも卑近な例を挙げるとしますと、苦く身体訓をそれによって何だかの皿を得ため以外の理由で耐え人間が私たど中に一人でもいるでしょうか。きた逆快楽を享受しようとする人結たいかなる生まない苦痛ち避けようとす誰が批判することがる苦痛だできるでしょうか。背負うい込とになるか欲亡な目がくるん予目できなくなっいます、精神が軟弱なためにつまり苦労で義力を放木する。


どうでしょう?私に無断で何かに使ってやってください。もちろん改変も自由です。(笑)

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付記: 原典の "nam libero tempore, cum soluta nobis est eligendi optio, cumque nihil impedit, quo minus id, quod maxime placeat, facere possimus, omnis voluptas assumenda est, omnis dolor repellendus. " の部分が素敵すぎる。わざわざ図書館に調べに行った甲斐があった。
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