2009-03-25

Nyepi と Easter

インドネシアの新聞で、本当は大トカゲに人が食われたという数日前の事件を調べたかった。でも、今日のニュース
Sepanjang akhir Maret hingga awal April 2009, PT Kereta Api menyediakan kereta api tambahan demi menampung lonjakan jumlah penumpang. Kenaikan jumlah penumpang menjelang hari raya Nyepi pada 26 Maret dan saat pemilihan umum sekaligus peringatan wafatnya Yesus Kristus, 9-10 April 2009, diperkirakan mencapai 25 persen.
(dari JAKARTA, KOMPAS.com. RABU, 25 MARET 2009 | 06:31 WIB)

が先に目に入ってしまった。

そうだった。明日は Nyepi (ニュピ) だ

Bali 島のヒンドゥーの大晦日 (後述★)。Bali 島では、 Nyepi の日出から次の日出 (新年の最初の日出) まで、次の Catur Brata
  • amati geni (tiada berapi-api/tidak menggunakan dan atau menghidupkan api)
  • amati karya (tidak bekerja)
  • amati lelungan (tidak bepergian)
  • amati lelanguan (tidak mendengarkan hiburan)
を守らないといけない。Nyepi の日に DPS (Denpasar, Bali) を発着する飛行機は一機もないというのは、有名な話かもしれない。

私は関係ないけど、でも明日、全然、上の4つを守れそうにないなあ…。

上の Kompas.com の記事は、今年は2つの移動祝祭日 [キリスト教 (インドネシアは西方教会系) の復活祭直前の金曜日 (4/10) と Nyepi (3/26) ] が近い (☆) ため、日本のゴールデンウィークのような状態になっており、 Jakarta あたりでは臨時列車を増発するというニュースだ。

イスラムだけではなく、いろんな宗教の祭日を国民の休日にしているインドネシアならではの特殊事情でした。

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★の部分について補足説明しておく。

いろんなガイドブックやウェブページで「Nyepi は Bali の暦で1月1日です」と書いてあるけど、
  • Nyepi は大晦日
または(同じことだが)
  • Nyepi の翌朝が元旦
が正しい。新年のための精進潔斎の掟が Catur Brata だ。私がここで1月1日ではなく大晦日だと主張する根拠は、インドネシア語版 Wikipedia Nyepi にそう書いてあるから (以下は引用だが、原文の表記の乱れや不統一は直した):


Nyepi
Keesokan harinya, yaitu pada panglong ping limolas sasih kasanga (atau tilem kasanga), tibalah Hari Raya Nyepi sesungguhnya. Pada hari ini dilakukan puasa Nyepi yang disebut Catur Brata Penyepian ...(略)... Brata ini dilakukan sejak sebelum matahari terbit. ...(略)

Ngembak Geni
Rangkaian terakhir dari perayaan Tahun Baru Çaka adalah hari Ngembak Geni yang jatuh pada tanggal ping pisan sasih kadasa. Pada hari inilah Tahun Baru Çaka tersebut dimulai. ...(略)... Jadi kalau tahun masehi berakhir tiap tanggal 31 Desember dan tahun barunya dimulai 1 Januari, maka tahun Çaka berakhir pada panglong ping limolas sasih kasanga, dan tahun barunya dimulai tanggal ping pisan sasih kadasa.

いいかげんに日本語で抄しておくと、


Nyepi
その次の日、つまり、第9月第15黒分日 (言い換えれば第9月の晦日) になるとすぐに Nyepi の日が始まる。…

Ngembak Geni
Çaka 暦での年末年始行事の最後は第10月第1の日の Ngembak Geni だ。この日から Çaka 暦の1年が始まる。 … だから、西暦年は毎年 31 Dec. に終わり 01 Jan. に始まるように、 Çaka 暦の一年は毎年 panglong ping limolas sasih kasanga (第9月第15黒分日) に終わり penanggal ping pisan sasih kadasa (第10月第1白分日) に始まる

Nyepi が基づいているのは、Çaka (あるいは Saka とも綴る) というインド系の暦だ。念のため: 日本の旧暦は中国系の暦なので、完全に異なるからね。

[インド系に限らず、暦に関しては suchowan さんのサイトがすごく詳細だ。左段の "暦の説明" のプルダウンメニューから、「インド太陽暦」や「バリ暦」を選べば、この blog で紹介している一部分ではなく、全容を知ることができる。ただ、残念なことに、どうも suchowan さん、サイトをもう維持する気がないみたい。]

インド系の暦では、朔から次の朔までを1太陰月という。それを、月の位相12度で区切ったのが太陰日だ。ここまでは、地球と太陽を固定して考えたときの月の位置だけで定まる。1太陰月はきっかり30太陰日だ (白分15日+黒分15日)。地球の自転や公転は関係ないから、世界中で、毎太陰月や毎太陰日の区切りは一斉に訪れる。

しかし、当然これに地球の自転と公転がからんでくるわけで、ごちゃごちゃしてくる。

Bail の Çaka 暦での1日 (太陽日) は日出の瞬間から次の日出の直前までだ。ある日をその月の「第何日」と呼ぶかは、その日の始まりの日出を含む太陰日と同じとする決まりだ 。

[ただし、9週間に約1回、日出を含まない太陰日がある。その場合、月内のどこかに「欠日」を置き、第n/n+1日のように表す。また、話の順としては、ここで本当は自転と公転にからむ「太陽月」なる概念の説明が必要だが、今回の記事とは関係が薄いので、ばっさり省略。これは、次の段落で、第9とか第10とか書いている、「何月」という呼び名の説明が省かれたことに相当する。]

第9太陰月 kasanga の最後の太陽日を Nyepi という。朔から第10太陰月 kadasa (インド暦に共通の、正月 Vaiśākha に相当) が始まる。今回の第10太陰月の始まりの朔は現地時間の深夜 2009-03-27T00:06+08:00 で、朔以降の最初の日出は 3/27 の朝である。

以上のような、読むのも書くのも面倒なストーリーが Wikipedia の記述の裏にはあったのだ。

自分のための単語帳: panglong [黒分日], penanggal [白分日], limolas [15], pisan [1], sanga [9], dasa [10]

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3/27 20:07 付記 ☆: よく考えたら、「3月21日 ≤ "望" ≤ 日曜」を満たす最初の日曜が Easter だった。「"春分" ≤ 朔」を満たす朔の直前の日出がNyepi の始まりなので、Easter 前に Nyepi がある場合、あいだが14日〜21日なのはよくあることだね。(汗)
ただし、 "望" や "春分" は現代の高精度の軌道計算でなく、古来の簡便計算を用いる。
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