2009-08-01

2割が「幻の本」になる

数日前に、国立国会図書館に調べものをしに行った(★)。

そのとき、ちょうど「40年前のアポロのアセンブラソースコード」がネットで 話題になっていた

関係はないが、そういえば20年以上前に、私は、アセンブラで書いたもので原稿料を貰った事があるぞ。と思い出し、そのソースコードが掲載されているはずの雑誌も国会図書館でついでに探してみた。もっと正確に言うと、行く前に既にネットからの検索は試してあった。しかし、検索できなかったので、現場でもというわけだ。

無い。

工学社の「I/O」という月刊誌の1記事として掲載され、全く同じ内容が「I/O別冊」にも載った。2回、きっちり原稿料を貰ったことまで憶えている。現物も送って貰った記憶があるのだが、引っ越しの時に捨ててしまったようだ。

国会図書館が所蔵する、工学社が発行した本や雑誌の一覧を見ても、それらしき「別冊」がない。そもそも、その時代の、I/O 本誌の方も所蔵が欠けている号が多く、しかも何やら図書館側が「作業中」ということで所蔵号すら閲覧できない。

とりあえず、あきらめた。しかし、たぶん「これか?」という書名だけは、同社が出版した別の雑誌の広告から読み取っておいた。

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日本には 納本制度 があるので、国内の普通の出版物ならなんでも、国会図書館に行けばあると無邪気に信じていた。無かったとしたら、誰かが盗んだとか破損したとかじゃないの、とも。

実際、このとき(★)は、同じくらい昔の、地方紙 "新潟日報" のある特定のページを見るのが目的だったのだが、昭和61年5月7日の夕刊第1面がそれだった: 雪と青空の美しいカラー写真だったはずがモノクロに変換されていてひどくがっかりはしたものの、お目当ての写真付き記事そのものはしっかりとマイクロフィルムに焼き付けられ保存されていた。

考え過ぎと笑われるかもしれないが、永遠に残ると安心していた「自分の痕跡」が、じつは既に失われていたとしたら、これはひどく悲しい。自分には邪魔で捨ててもいいと感じる、その同じものを、他の誰かには大切に保ちつづけて欲しい。そういうわがままなものは世の中に他にもたくさんある気がする。 Honi soit qui mal y pense. ;)

上にあげた Wikipedia の "納本制度" の項目を読むとこんなことが書いてある: 出版した者には納本の義務があり、もし怠った場合には罰則もある。ただし、実際には8割程度しか納本されていない。

とくに、マンガやサブカルチャーは納本されていないことが多いそうだ。そうか、1980年代のIT関連の雑誌(当時は「マイコン」雑誌と呼んでいた)は、サブカルチャーの同人誌だったのか。

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でも、書名の目星がついたおかげで、昨晩やっと、ネットで見つけた。ある公立図書館の保管庫にあると分かったので、今日、さっそく見に行って来た。

というわけで、探していた本はこれ:

6809 活用研究 (I/O 別冊)
1989年1月20日 初版発行
編集: I/O編集部

pp.75-77 が私の書いた部分: ネット上に目次の画像もあったので、現場に行く前に分かっていた。ちなみに掲載されたアセンブラソースを再現したのがこれ。いまこれを読むと、まるで別人が書いた物のように見え、個人的にはつっこみどころ満載。(汗)

まあ、アポロとは比べ物にならない、埃のようなエピソードですが。

ともかく。所蔵していてくださって、ありがとうございます >>世田谷区立中央図書館さま!!

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付記: 1980年代の富士通製マイコンや MC6809 に関しては、画像(上に引用)、書籍の情報ともにOh!FM-7ミュージアムが何かと一番詳しい。
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