2009-09-19

Stanisław Lem

大昔に読んだSFをもう一度読みたくなって、Amazonで調べたら絶版だった。

中古でも、と思ったら、なんと 1 円で出品されていた。いい本なのになんだか切ない。

今日、物が送られて来たが状態は非常に良い。500円くらいで売っていて欲しかった。

スタニスワフ・レム「宇宙創世記ロボットの旅」(原題: CYBERIADA)
吉上昭三、村手義治訳
ハヤカワ文庫SF320, 1976.

最近、レムの作品は別の翻訳者による日本語訳が出始めているようだが、これはまだ新訳が出ていない。訳がとても硬い感じなので、ひょっとすると、ポーランド語からロシア語を経由しての重訳なのかもしれない。新訳が出るのが待たれる。

この本を「面白いよ」と教えてくれたのは大学の先輩だった。短編集で、すべてが私のお気に入りだが、とりわけ「白楽電」というのが登場するお話が良い。白楽電はお題を与えると「詩」を作ってくれるコンピューターだ。

お題はいろいろなのだが、「愛と死についての詩で、用いる用語はすべて高等数学のものを使うこと。とくにテンソル代数と、高等位相幾何学、解析学。詩にはエロチックなおもむきと厚かましいところもなければならない。すべてはサイバネチックスの範囲内であること」に対する白楽電の回答が素敵だ。私の先輩の話でもいちおしはこの詩だった。

残念。詩はここには引用しない。本を買って読みましょう。(笑)

今になると、サイバネチックスという言葉自体が古めかしく懐かしい。詩文に出てくるテンソル代数も現代的な取扱いとは思えない。この小説が書かれた時代の、未来への夢あふれるサイバネティックス、(テンソル解析が応用された)最先端の科学としての一般相対論の姿が透けて見える。

SFこそ書かれた時代の背景を探る歴史資料となるのだ。
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