2009-02-09

タイ文字の表

2/7の記事で、かな文字 "を" の物語を少し書いたものだから、タイ語の母音符号に関して私が以前に作った表を思い出した。

下の表がそれ。どんな本や辞書にもない独自の配列のしかたと色分けがしてある:


(クリックすると大きくなる。)

タイ語の母音符号は、ぱっと見ただけでは、とんでもなくでたらめで不規則に思える。だから、それをただ丸暗記しようとしたら全然面白くなく、けっきょく挫折する。そこで、母音符号を、文字を考案し、それを用いて王や偉人たちの業績を碑に刻みこむという作業を行った、古の哲人たちの大いなる遺産と思ってみる。そうすれば、(「現在の発音に」ではなく)書かれている図形に導かれるまま、こうやってていねいに並べてみようという気になるだろう。その結果、あら不思議、増改築を繰り返した痕跡が。まるでダンジョンのよう。とても素敵ではないか。

この表を書いたことにより、私の場合は特に「オ」の音のあたりの記法が楽に身に付いた。

表の一般的な使い方は自明なので、説明は省略。ほんとうは、自分の実力に応じたやり方で、自己流でいいからこういうのを作ってみる。それが一番勉強になると思う。完成したものをはじめに見てしまっては、得られるはずの衝撃や感動が得られない。

[文字の背景や罫線の色は飾りではないが、赤い字のことは無視したほうがいい。白き地に遥かなる古の法を齎す赤き字の魔を召く者絶ゆれば虚し:現代ヒンディーなどとも同じロジックが、と一言だけ記してくわしい説明は避ける。]

蛇足:古の哲人たちは、まず「構造上の韻尾字としてあり得ないのは『喉』字(次表参照)のみである」の大原則を踏まえた。そして母音符号系を 上/下→右→左→左上/左 の順に図形を追加することによって増補していった。(白地の部分は作らずとも既にあるので)まずは黄色を、その次にオレンジ色を、…
--- 哲人たちのその過程をここで検証してみる。出来上がった体系のどの符号でもいい。任意に選んだ母音符号で、 左 にあるものを新しい順に(つまり、まずは左端の棒とかでっぱりから)外してみよう。外してもちゃんと意味のある記号になっている。 左 に外せるものが無くなったら、次は、 右 にあるものを外してみよう。すると、やはり意味のある記号になっている。 ---
つまり、タイ語の母音符号は結合順に関し "閉じた" 構造をもつ。この考察により、ダンジョンの多重母音モンスターたちの生い立ちと音価に関する洞察が得られ、 □ือ には "貼付けられたอ" がどうしても必要だという理由も分かった。

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ついでなので、子音字の方も、同時期に作ったやつを載せておく。まあ、他で似たようなものを見たが、下の表の方が絶対にいい:


(クリックすると大きくなる。)

同じく、説明は省略。(赤い文字は封印されたまま忘却された古い記憶を表すので、無視したほうがいい。)

蛇足:タイ文字の声調記号 อ่ อ้ อ๊ อ๋ (ここで、仮に อ の上に乗せておいた記号たち)は、自然数の 1 2 3 4 に由来し、絵柄もいわゆるアラビア数字(我々が現在使っている数字の絵柄)にそっくりである。自然数であるということの理由はちゃんとあるので、ここで述べる。声調記号なしで記された古来からの語たちが、時代変化に伴う音価の合流の結果、どのように声調として区別し発音されるようになったかを古の哲人は分析したはずだ。その結果、5種類の声調が観察されたが、どの声調をどう記述するかには任意性がある。いまや、従来の声調ルールに当てはまらない新たなる語の声調を記す必要が生じ始めている。無駄な記号を、王や偉人を讃える石碑に刻みたくない。かなり巧妙にデザインしなければ…と考え、哲人は、声調の絶対的な表記は避け、
[低] + { 声調の自然数 | [入] + [低入短] } の値が "整合的" である
ということを要請し、 "加法" の世界樹の下に conjure した。
(ただし [・] は「・が成立で1、不成立で0」を表すものとする。)

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たったこれだけだけど、けっこう楽しい。名匠の技を鑑賞した気分。

未来へのリンク:この blog の、次回のエントリその次の回のエントリが今回に関連しました。

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