「熱力学に出てくるいろんな関係式は、微分形式で計算したほうが見通しがいい」
これは、たぶん分かってる人は分かってるが言ってもしょうがないから言わないだけ、というような類のことだ。実際、私が学生時代に使った教科書はどれも、そういう方法を採っていなかったし、先生もそんなことは言っていなかった。
でも、誰かの役にたつかもしれないので、念のために以下にデモンストレーションする。この blog では毎度のことだが、 数学的に and/or 物理的に どんなレベルの読者を対象にしているのかという設定は、全く不明だ。単なる自己満足なのさ。(笑)
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まず、熱力学第0法則は「温度 」が well-defined であるという公理だ。
それを踏まえて、熱力学第1法則がある。これは、エネルギー保存則を要請することにより、自然に「エントロピー 」という状態量が定義できるという主張だ。正確には、[次元は2以上で単連結な、ある微分多様体上の] ある特定の 2-形式 (次式の左辺) が零である、という等式で定式化される:
☆
(ここで、体積を 、圧力を で表した。)
☆式の左辺の 2-形式からは、非自明な、閉 1-形式が自然に4つ得られるが、
閉形式は完全形式である
という一般的な性質より、4つの 1-形式のそれぞれに、外微分で対応する 0-形式が (定数を除けば一意的に) 存在すると分かる。そこで、以下のように 0-形式の名前 (と記号) を定義する。
- 内部エネルギー:
- エンタルピー:
- Helmholtz の自由エネルギー:
- Gibbs の自由エネルギー:
便利な座標系を選んで計算しましょう という、それだけのこと。
上の式たちが 1-形式だと思っていれば、たとえば、
などは、あたりまえ 以外の何物でもない。また 0-形式 の2階偏導関数を考えれば、いわゆる「マックスウェルの関係式」と言われるものたちも簡単に導ける。
他にも、熱力学と統計力学の橋渡しとして重要な「ギブス-ヘルムホルツの関係式」といわれる式
を、偏導関数たちから導出しようとすると目がチカチカしがち。けれども、微分形式の計算として、
を得るのは、 を で表すという方針がはっきりしているから、暗算でできるレベルだ。
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以上、書くだけ書いてみた。難しいことも、憶えなきゃいけないことも、何にもない。あ、☆の式 1つだけは憶えるほうがいいかなあ。
でも、今回の内容に関して、質問や議論は受け付けません。こういう内容だと、変な論争を仕掛けてくる分かってないマニアがいたりするのだが、ごめんなさい、あっさり 削除 or シカト(メールは迷惑フィルター) しますので勝手にお気を悪くなさらないように、と警告しておく。内容の無い、哲学みたいな話は、けっきょく、他人と話して楽しいことが稀。
微分形式の勉強してねっ、の一言。(笑)
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