Twilight という項目で、ナイトダイビングの時に「国立天文台」のウェブサイトが使えるよ、と書いた。
ついでなので、潮汐に関しては UK Hydrographic Office (UKHO) が使える、と書いておこう。リンクしないのは、リンクが切れてもいいように。検索で目的のサイトに到達してください。その方が将来にわたって使える一般的な方法だよ。
UKHO では世界中の潮汐が(表とグラフの両方の形式で)調べられる。1ヶ月後だろうと1年後だろうと調べられる(当日を含む1週間先までの潮汐なら無料。その先は有料)。なにしろ、かつてのイギリスは七つの海を制覇した、日の没することのない大英帝国だった。けっこうマイナな場所の潮汐がわかってびっくりする。
英語の書かれたプリントアウトで「日本のデータは海上保安庁が計算して提供している」と、UKHO での静岡県網代港のグラフを見せながら、そのナイトダイビングのときのゲストには説明したのだが、みんな誤解しただろうな。というか、説明が面倒なので、私がわざと誤解させたのだが。
何で日本なのにイギリスのサイト見てるんだろう、とグラフそのもの(と私)を信じてなかったかも。笑
潮汐は、気圧や海流や水温や波の影響を除去したモデルで計算される。このモデルは有限個の正弦曲線(サインカーブ)の重ね合わせ(和)である。それぞれの項の周期は「地球の自転」「月の運動」「地球の公転」「地球の歳差運動」……(他の惑星の公転周期など)で複合的に決まるもので、地球上の場所に依存しない定数である。1つの正弦曲線を定めるには他に「位相」「振幅」を定めればよい。位相と振幅は場所に依存し、験潮所などの施設で長期にわたって実際に観測して推定することになる。
つまり、ある1ヶ所の潮汐をモデルによって「計算」するためには、各項のパラメータ(位相と振幅)だけがあれば良いということになる。「海上保安庁が」云々は、このパラメータを海上保安庁が UKHO に提供している、という意味だったのだ。
項数は、たしか16項くらいだったかな?そのくらいの正弦曲線の重ね合わせで、きわめて精密に現実の潮汐が予報できる。パラメータさえ貰えば、誰にでも計算できるし、誰が計算してもおなじ潮汐の予報が得られる。
パラメータは観測データによりアップデートされるような性質のものであるし、天体の運行に潮汐が影響するため、未来永劫、精密な潮汐が予報できている保証はないが、1年先くらいだったら確実である。モデルの誤差より、気圧や海流や水温の影響の方が甚大だ(注)。
(注: たとえば、台風が来たら海面は上昇するし、黒潮が島にぶち当たっていたらやはり海面は上昇する。これらの要因で数十センチは違い得る。水温は関係なさそう、と思った人、甘いな。暖水塊で海面上昇、さてどうしてでしょ?答えは自分で考えてね。)
この blog の「汽水域」の項で、略最低低潮面、という用語を何の説明もなく用いた。海図には、これ以外にも、大潮升、という用語も書いてある。
実は、かつて、小型船舶操縦士の免許を取りにいったとき、海図の読み方の時間に「略最低低潮面」と「大潮升」の正確な定義を先生に質問したのだが、回答に納得できなかった(大潮升は「知らない」って答えられたよ)。これは、潮汐のモデルが上述のように正弦曲線の重ね合わせであることを知らないと、正確には答えられない。
正確な答えを書いておく: 精密な潮汐モデルではなく、振幅の大きい主要な4項だけで打ち切った近似モデルを作ったときの最小値が「略最低低潮面」であり、最大値とそれの差が「大潮升」である。
(ひとりごと: inf と sup って書いとくのが安全だけどやめとく。)
そう答えてくれれば納得したのに。って、私が変?
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