2009-06-21

エビ媒花

甲殻類(エビ、カニなどを含む生物のグループ。たぶん、甲殻亜門と言ったほうが正確)について、調べていた。2008-12-30 に、Sapphirinid copepods という題のエントリを書いたが、それがきっかけで甲殻亜門に関して「目覚めてしまった」のかもしれない。

そこで、今回は、最近私が知った、2つのことを書こうと思う:--

1.
(Photo: Aspidistra elatior Blume. Tijdschr. 1. 76. t. 4. (1834) with fruit.)

左の写真の真ん中には "ミカン" みたいなものが写っている。これは今日、うちの近所で発見した、「ハラン」という植物の果実だ。

ハランは、Wikipedia に書かれているように、家屋の周りの日陰によく植えられている観葉植物だ。弁当を買ったときに、おかずとおかず、おかずとごはんがくっつかないように入っている、上がギザギザの緑色のビニール。あれは「人造バラン」(略してバラン)というが、もともとはビニールではなく、植物のハランを切って作られていたのでこの名がある。高級な寿司屋とかに行くと、今でも植物のハランのが出てくることがあるらしいが、私は知らない。(笑)

というわけで、けっこうおなじみの植物であるにもかかわらず、ごく最近 (1995年) になるまで重要なことが解明されていなかった。それは、

ハランの花粉を媒介するのは、ダンゴムシ

ということ。ミツバチやら鳥やら風やら水が花粉を媒介するのではない。既に示した Wikipedia の該当ページにもこの記述がある。(ちなみに原論文を読もうと思ったら、雑誌 Nature に載ってて、お取り寄せができない。。。この高慢な雑誌、何か変で、いやーな感じが漂っているなぁ。)

ダンゴムシは、甲殻亜門の生物だ。海の中だけではなく、陸の上にだって、エビ・カニの仲間はいるのだ!とはいえ、ダンゴムシは 等脚目 (Isopoda) だから、エビ・カニとはかなり遠いが。。。フナムシやワレカラ(前者は陸、後者は海に居る)には近い。

2.
(Photo: Possibly Pseudosquillia ciliata, D -12m, TL 40mm, Is. Ani, Ogasawara, Japan)

左は、ダイバーがほとんど注目していない、シャコの一種の写真だ。珍しいものではなく、ごく普通に居る。ただし、小さいし、もし、全身を出していたとしたら、動きがすばやいので、観察したり写真を撮ったりするのは困難だ。

この写真の個体は、たまたま、同じ場所で、体をひねったり、ジャンプしたりしていた。脱皮の直前かなにかだったのか?そういうわけなので、きっちり撮れたこと自体がなかなかの幸運だと思う。

このシャコもそうだが、シャコの類は眼に特徴がある。穴から警戒しながら頭を出し、外を見ているシャコの眼は、他の生物にはない、独特の動きがある: 眼柄の先の目玉が回るし、眼の模様も回ってる気がする。

Wikipedia のシャコの項目に「シャコは、円偏光の回転方向を識別できる。2008年6月現在、円偏光を感知できる生物は他には見つかっていない」という記述がある。この内容は、

Tsyr-Huei Chiou, Sonja Kleinlogel, Tom Cronin, Roy Caldwell, Birte Loeffler, Afsheen Siddiqi, Alan Goldizen, and Justin Marshall, "Circular Polarization Vision in a Stomatopod Crustacean," Current Biology, 18(6), pp.429-434 (Mar. 25, 2008)

という、去年発表された論文に書かれている。Current Biology という雑誌は、もちろん、ネットから無料で閲覧が可能だ。

シャコのあの独特の目つき。自前の円偏光フィルターをぐるぐる回して、世界を眺めていたとは!!

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以上、比較的最近に発見された、生物学的な「豆知識」2つでした。甲殻類ってすごいなあ♪
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