Stanisław Lem 2009-09-19 個人的な好み,数学
ある大学でこんな授業が実際にあった 2009-08-19 個人的な好み,数学
特殊記号の読み方 2009-08-03 英語,音楽,数学
経歴詐称 2009-07-23 資格試験,数学
【爆笑】「1 1 5 8 だけで合計数字が10になる計算しろや」 2009-07-19 CGI,数学
ペタバイトって? - 大きな数をやさしく説明するには 2009-07-17 Web,数学
M系列をハッシュに 2009-07-11 Web,数学
Luhn algorithm 2009-07-07 個人的な好み,数学
微分形式と熱力学 2009-06-17 個人的な好み,数学


2009-09-19

Stanisław Lem

大昔に読んだSFをもう一度読みたくなって、Amazonで調べたら絶版だった。

中古でも、と思ったら、なんと 1 円で出品されていた。いい本なのになんだか切ない。

今日、物が送られて来たが状態は非常に良い。500円くらいで売っていて欲しかった。

スタニスワフ・レム「宇宙創世記ロボットの旅」(原題: CYBERIADA)
吉上昭三、村手義治訳
ハヤカワ文庫SF320, 1976.

最近、レムの作品は別の翻訳者による日本語訳が出始めているようだが、これはまだ新訳が出ていない。訳がとても硬い感じなので、ひょっとすると、ポーランド語からロシア語を経由しての重訳なのかもしれない。新訳が出るのが待たれる。

この本を「面白いよ」と教えてくれたのは大学の先輩だった。短編集で、すべてが私のお気に入りだが、とりわけ「白楽電」というのが登場するお話が良い。白楽電はお題を与えると「詩」を作ってくれるコンピューターだ。

お題はいろいろなのだが、「愛と死についての詩で、用いる用語はすべて高等数学のものを使うこと。とくにテンソル代数と、高等位相幾何学、解析学。詩にはエロチックなおもむきと厚かましいところもなければならない。すべてはサイバネチックスの範囲内であること」に対する白楽電の回答が素敵だ。私の先輩の話でもいちおしはこの詩だった。

残念。詩はここには引用しない。本を買って読みましょう。(笑)

今になると、サイバネチックスという言葉自体が古めかしく懐かしい。詩文に出てくるテンソル代数も現代的な取扱いとは思えない。この小説が書かれた時代の、未来への夢あふれるサイバネティックス、(テンソル解析が応用された)最先端の科学としての一般相対論の姿が透けて見える。

SFこそ書かれた時代の背景を探る歴史資料となるのだ。

2009-08-19

ある大学でこんな授業が実際にあった

ひろゆき@オープンSNSさんのところでこんな話が書いてあった:
ある大学でこんな授業があったという。 
わりと、好きなコピペ。

*************

ある大学でこんな授業があったという。 
「クイズの時間だ」教授はそう言って、大きな壺を取り出し教壇に置いた。
その壺に、彼は一つ一つ岩を詰めた。壺がいっぱいになるまで岩を詰めて、彼は学生に聞いた。
「この壺は満杯か?」教室中の学生が「はい」と答えた。
「本当に?」そう言いながら教授は、教壇の下からバケツいっぱいの砂利をとり出した。
そしてじゃりを壺の中に流し込み、壺を振りながら、岩と岩の間を砂利で埋めていく。
そしてもう一度聞いた。
「この壺は満杯か?」学生は答えられない。
一人の生徒が「多分違うだろう」と答えた。

教授は「そうだ」と笑い、今度は教壇の陰から砂の入ったバケツを取り出した。
それを岩と砂利の隙間に流し込んだ後、三度目の質問を投げかけた。
「この壺はこれでいっぱいになったか?」
 学生は声を揃えて、「いや」と答えた。
教授は水差しを取り出し、壺の縁までなみなみと注いだ。彼は学生に最後の質問を投げかける。
「僕が何を言いたいのかわかるだろうか」

一人の学生が手を挙げた。
「どんなにスケジュールが厳しい時でも、最大限の努力をすれば、
 いつでも予定を詰め込む事は可能だということです」
「それは違う」と教授は言った。

「重要なポイントはそこにはないんだよ。この例が私達に示してくれる真実は、
 大きな岩を先に入れないかぎり、それが入る余地は、その後二度とないという事なんだ」
君たちの人生にとって”大きな岩”とは何だろう、と教授は話し始める。
それは、仕事であったり、志であったり、愛する人であったり、家庭であったり・自分の夢であったり…。
ここで言う”大きな岩”とは、君たちにとって一番大事なものだ。
それを最初に壺の中に入れなさい。さもないと、君達はそれを永遠に失う事になる。
もし君達が小さな砂利や砂や、つまり自分にとって重要性の低いものから自分の壺を満たしていけば、
君達の人生は重要でない「何か」に満たされたものになるだろう。
そして大きな岩、つまり自分にとって一番大事なものに割く時間を失い、その結果それ自体失うだろう。

壷が満杯になるとか、人生訓的な結末とか。以下に劣化コピーしておくが、 ★ / ☆ の部分には、
  • 自然数の集合 / 一つ
  • 自然数の集合 / 自然数の集合と同じ個数
  • 0を超え1未満の実数の集合 / 一つ
  • 実数の集合 / 実数の集合と同じ個数
をそれぞれ入れて、4通りのストーリーとして読んでね。

--- 劣化コピー始まり ---
わりと、有名なネタ。

*************

ある大学でこんな授業が実際にあった。
「クイズの時間だ」准教授はそう言って、 ★ を取り出し教壇に置いた。
その ★ の要素に、彼は一つ一つ石ころを対応させた。 ★ がいっぱいになるまで石ころを対応させて、彼は学生に聞いた。
「 ★ の要素は石ころと同じ数だけあるか?」教室中の学生が「はい」と答えた。
「本当に?」そう言いながら准教授は新しい石ころを ☆ だけ取り出し…

(以下省略)
--- 劣化コピー終わり ---

人生訓的な結末は、この劣化コピー版には残念ながら全然ない。岩は先だろうが後だろうが、壷が "大きければ" 満杯でもいつでも入る。

重要なポイントはそこにはないんだし、この例が私達に示してくれる真実なんかない、と思って構わない。

オリジナルのストーリーの持つ "説教臭さ" のようなものがわりと私の鼻に付き、当分、好きになれそうにないので、茶化してみた。(笑)

2009-08-03

特殊記号の読み方

「特殊記号の読み方」のページ。この手の話題は、どうやら定期的に盛り上がるようで、今日、はてなブックマークがたくさんついていた。行った先が古かったので驚いた。

でも、リンク先のページを、なるほどね、と思いながら読んでいたら、あれっ?という記述に出くわした: ∴ は、数学記号の「ゆえに」と地形図記号の「茶畑」に使われるのだが、

(誤) ∴ アスタリズム、三つ星

と書いてあったのだ。

そこで、検索を掛けてみた。「三つ星」に関して、有用なページ Messier Catalogue 27: 茶畑記号の老舗 がヒット。

このページによると、「茶畑」の記号と理解する場合は、宇治茶の老舗「三星園」の屋号に由来するそうだ。ならば、「三つ星」と呼ぶのは不思議ではない。

しかし、記号の読み方と言うのなら、数学記号と理解して「"ゆえに" 記号」とでも呼んで欲しい気がする (英語なら "therefore sign")。例えば、卍をその読み「まんじ」ではなく「地形図記号の寺院」と言ったら、間違いではないがひねくれていると思うからだ。要するに主観の問題なのだが。

ところで、「アスタリズム」の方も知らなかったので、"asterism" でヒョウ柄リンゴの英和辞書 (by 小学館) を引いてみた:

⁂ または [これの上下がひっくり返ったもの] 

とある (日本語訳は "三星印")。どうやら、アスタリズムは ∴ のことではないようだ。

以上をまとめると、

(正)∴ therefore sign、"ゆえに"、地形図の茶畑、三星園の屋号
(正)⁂ asterism、三星印

となる。ただし、asterism の方は上下がひっくり返ったも同じ名称だ。

---

ところで、「特殊記号の読み方」に関しては Japanese typographic symbols (英語版。日本語版 Wikipedia には該当項目なし) がとても良くまとまっていると思う。英語のページなのにローマ字読みと日本語が付いている。

そこに書いてある「再販期限を表す Ⓧ の記号」、たしかに音楽CDに使われている (写真)。

今まで全然、気がつきませんでした。

2009-07-23

経歴詐称

嘘も方便、かもしれない。でも、チェックすればすぐバレる嘘はつかないほうがいい。永遠に信用を失う。
共同教職大学院の申請取り下げ 准教授の経歴詐称で5女子大

 昭和女子大(東京都世田谷区)など都内の5女子大が来年度の開設を目指していた共同教職大学院の設置認可申請を取り下げたことが23日、わかった。教職研究科長に就任する予定だった元昭和女子大総合教育センター准教授の男性(61)が文部科学省に提出した申請書類で経歴を詐称していたためという。共同大学院として初の申請だった。
…(中略)…
 昭和女子大は2003年4月に男性を非常勤講師として採用、男性は当時から経歴を詐称していたという。大学、大学院の設置申請に虚偽があった場合、学部、研究科の新設が最長5年間認められなくなる可能性があり、文科省が今後、虚偽記載の経緯を調べる。(NIKKEI NET 2009-07-23T14:01)

周りの人にとっては、本当に迷惑な話だっただろう。しかし、残念ながら、大学関係で、この手の嘘をついている人は少なくないと思われる。

とくに、学位。「学位工場」(Diploma Mill) といわれる「大学」に、お金を払えば貰える。ただし、見る人が見れば、バレバレでみっともないが。まあ、名の通った大学の学位でも、コネで取ったとしか思えない人が居るのは事実。。。おっと、キーボードが滑った。(笑)

他にも、自分の著書(和書)の略歴で、
  • 実際には技官だったのを助手(助教)に
  • 助手(助教)だったのを講師に
  • 講師だったのを助教授(准教授)に
と、見事なまでに一段階ずつシフトさせていたD大学H教授(仮名)を見た事がある。これはバレにくいが、バレた時に失われる信頼は大きいよ。と、嘘をつかれた経験者(私)は語る。このケースでは、そのご著書自体が洋書の完全なパクリ(H教授が理解できないところを省いた抄訳)だったというオチまでつくのだが、これ以上書くと、相手が特定できるので、今日は止めておく。とても長くてつらい話になる。

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上の NIKKEI NET の記事を見て、私自身のことを考えてみた。私が「詐称」していないことを、ネットで簡単に確かめることができると便利だ。と、ふと思いたって、試してみた。もちろん公式の「証明書」を発行してもらえばすむ話だが、「ネットで簡単に」の部分が肝心だ。

今や、いろんな情報がネットからアクセスできる。しかし、この手の情報は、情報自体が存在するサイトを知らないことには確かめられない。 Google ではまだ検索できない、少なくとも今のところは。

やってみた。なにしろ、私は情報がどこに存在しうるかを知っている。できた。

これで、「証明しろ」と万が一言われることがあったとしても、まったく手間がかからない:このサイトに行って、キーワードはこう、と指示するだけ。超簡単。(名前だけでなく、キーワードでも絞る必要があるのは、同じ字の同姓同名の方が1年違いで近い分野に実際に居られたから!)

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この話にはオチがある。実は、さっき、twitter の側にはちょこっと流してしまったのだが、「ネットで簡単に私が詐称してないと分かる情報」を見てみたら、そこに誤植があったのだ。

実際、この誤植のおかげで、最初は情報に到達できなかった。冗談ではなく、かなりあせった(笑)。論文タイトル間違わないでくださーい >> 国立T大学図書館

というわけで、知らないところで他人が入力した自分の個人情報って恐い、と認識したのでした。今日、確認して本当によかった。将来、要らない可能性高いけど。。。

2009-07-19

【爆笑】「1 1 5 8 だけで合計数字が10になる計算しろや」

これは、昔からあるパズルだ。「切符パズル」とか「小町算」とか呼ばれる。

元エントリは「1 1 5 8 だけで合計数字が10になる計算しろや」アルファルファモザイク。

「1 1 5 8 を10にする」際のルールは、
  • 用いるのは + − × ÷ と ( ) だけ
  • 数字の順番は変えて良い
というもの。

で、まあ、これはしばらくやれば解けるわけだが、上記エントリでは正答を書き込んだ人への出題者の反応が笑える。また、外野の人の反応も爆笑

とにかく、上のリンクをクリックして元記事をお楽しみくださいませ。

---

さて、今回は私の blog のほうの内容的にはこれで終了なのだが、それだけではあまりにも。。。

というわけで、おまけ: 大昔に私が作ったものを引っぱり出してきた。この手のパズルを解くプログラムだ。まあ、しらみつぶしをしているだけで何の工夫もないのだけれど。ちょうどいい機会なので4年ぶりに再公開。(笑)

あ、「3 3 8 8 で24を作る」という問題もお勧め。ルールは上と同じね。

4つの数字を + − × ÷ して、ある値にしましょう (カッコ使用可)

4つの数字:


どんな値にする?


数の並び順:
変更不可

(答は別ウィンドウで出ます)

注意:
  • 手抜きなので、数字以外を入力したりとかそういう意地悪はしないでください。
  • 数字は4つということで固定です。
  • 4つの数字で作る値と、順番を変えていいかどうかは選べます。
Enjoy!

2009-07-17

ペタバイトって? - 大きな数をやさしく説明するには

Mozy (無料オンラインバックアップサービス)の公式ブログの1エントリを、しげふみ氏のブログ「1ペタバイトってどのくらい?」で紹介しているのを読んだ。

確かに、面白い。1テラのハードディスクなら今、家電量販店に行けば売ってるので、なんとなく実感が湧く(?)が、その上の「ペタ」となると、もう、抽象的にしか分からない。Mozy の記事によれば
  • 1ペタバイトあれば、13.3 年間録画しつづけた HD-TV Video を保存できる
  • 50ペタバイトあれば、人類が今までに(どのような言語であれ)書いたものを全て保存できる
のだそうだ。へ〜。へ〜。

Mozy の記事には、左のようなグラフも書いてあった。1GB のお値段のグラフ10年分だ。

本当に安くなったものだ。

私の記憶では、この折れ線グラフの始点よりさらに約10年遡った1989年には 1GB のハードディスクはたしか400万円だった(当時のレートはおおよそ 123円 = $1 なので、約 $32500 ということになる)。ディスク(筐体込み)の大きさも 幅25cm x 奥行60 cm x 高さ30 cm くらいだった。現在の市販品なら小指の爪半分くらいの micro SD が一番小さいのかな?

ちなみに、当時、 1GB のハードディスクは身近に2台あったのだが、1年の保証期間が過ぎた直後に両方とも壊れた。(笑)

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そういえば。

「ペタバイトって?」のように、大きすぎる数とか(逆に)小さすぎる数は、なんだかピンとこない。そういうとき、最近公開された数学的検索エンジン WolframAlfa に数を入力してみると、 "Comparison" という欄に分かりやすい比較対象を表示してくれて、役に立つ。というか、そんなつまんない問題だけじゃなくて、もちろん、いろいろ他が役に立つんだけども。

Wolfram 先生によると、1ペタはおおよそ "56 x the number of red blood cells in human body" だそうな。分かったような分かんないような。。。

ついでに 10 の 100 乗を Wolfram 先生に訊いたら、Google 先生を引き合いに出しました。ははは、そりゃそうだけど。(下の画像がそれ。)


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蛇足: Mozy の元記事で、細かいことが気になった。「ペタは 10 の 15 乗(=1000 の 5 乗)」であって、1024 の 5 乗ではないのだ。

詳しくはデータ量の比較を参照のこと。簡単に言うと、はるか昔に、1024byte を 1KB (K は大文字) と表し、 k (1000) も K (1024) もどちらも「キロ」と呼んでしまったという事情がある。たった 24byte の違いだからいいだろうという、この浅知恵は後の世に禍をなす: 1MB がその時々で 1000kB だったり、1000KB だったり、 1024KB だったりしたのだ。そのさらに後、1GB が普通の世の中になっても同様の混乱が残った。2002年になり、ようやく、この混乱を収束させるため、1000 と 1024 のベキ乗の系列に別の接頭辞(たとえば、T = テラ = tera は 1000 の 4 乗、Ti = テビ = tebi は 1024 の 4 乗)を使い区別するのがお勧めになったのだが、まだ、普及してないのかな? [ついでに:  通常使われている意味での "1byte = 8bit" も必ずしもそうでないとされた。"8bit " を単位にする場合は "o" (octet) という記号で書くことが推奨されている。]

というわけで、Mozy の元記事は、正確に言うと、P = ペタ = peta = "1000 の 5 乗" の説明ではなく、Pi = ペビ = pebi = "1024 の 5 乗" の説明になっている。1Po と 1Pio はヒト6.3人の赤血球の総数くらい違うので、きっちり区別しましょうね。えーと、赤血球を 8bit に1個ずつ貼ってね。

2009-07-11

M系列をハッシュに

"当面C#と.NETな記録" さん(Hatena::Diary) のところに、興味深いエントリ「[C#] 一番右端の立っているビット位置を求める「ものすごい」コード」があったので、以下に引用:

一番右端の立っているビット位置(RightMostBit)を求めるコードで速いのないかなーと探していたら、ものっっっすごいコードに出会ってしまったのでご紹介。2ch のビット演算スレで 32bit 値のコードに出会って衝撃を受けて、その後 64bit 値版のヒントを見つけたのでコードを書いてみました。

...(中略)...

public static int GetNumberOfTrailingZeros( long x )
{
    ulong y = ( ulong ) ( x & -x );
    int i = ( int ) ( ( y * 0x03F566ED27179461UL ) >> 58 );
    return table[ i ];
}

table は以下のようにして求めます。

static int[] table;

table = new int[ 64 ];
ulong hash = 0x03F566ED27179461UL;
for ( int i = 0; i < 64; i++ )
{
    table[ hash >> 58 ] = i;
    hash <<= 1;
}

注: 引用元のコードには x==0 で分岐させる if 文があったが、それは筋が悪いので引用部分からは除去した。この改竄の結果、上掲のコードは、
引数 x の最下位ビットが 1、あるいは、 x==0 のいずれの場合でも、 GetNumberOfTrailingZeros() は 0 を返す (★)

という仕様になった。


なるほど!

---

このアルゴリズムの主たる仕掛けは、次の (1)〜(3) だ。

(1) 有限体 上の6次多項式


原始多項式である(参照: 今回の記事の一番下の方にある、参考文献 [L&N1994] の表をスキャンした画像)。

(2) 一般に、 上の 次原始多項式を特性多項式とする非自明な無限数列は、M系列である(すなわち、周期 を持つ【この証明は、例えば [L&N1994] p.205 Theorem 6.33 にあるが、この事実を逆に原始多項式の定義と思っても構わない】)。

(3) 特性多項式が (1) である、次の線型漸化式と、その初期条件


で定まる 上の数列 を考える。 0 に引き続き、第 1 項 から第 までを順に並べ


とする。これを64bitの2進数とみなした 0x03F566ED27179461UL は、シフトを使ったハッシュに利用できる。

そういううまい話だ。

あったまいいなあ〜。M系列はこんな使い方もできたんだね。

---

でも、そういうことが分かると、元記事で挙げられている以外のマジックナンバーはないのかと気になる。

というのは、 上の6次原始多項式はこの世にたったの6個


しか存在しないからだ([L&N1994] の表を参照してね)。

だから、2進数で表したときの先頭が 0000001... となる(要するに、★の性質を持つ)ことを、上記の原始多項式のそれぞれに対応する線型漸化式の初期条件として要請すれば、マジックナンバーが6通り(うち、3番目は既出)得られる:

0x0218A7A392DD9ABFUL
0x02FCA8CF75A6C487UL
0x03F566ED27179461UL
0x03C953422DFAE33BUL
0x03848D96BBCC54FDUL
0x03731D7ED10B2A4FUL

また、逆に、★の性質をもつ64bitのマジックナンバーは、この6通り以外には簡単に(システマティックに)求められるものは存在しない

---

このエントリで用いた、「 上の全ての "既約多項式" とその "周期" を表にしたもの」の最初の部分が次の画像。(ただし、10 次既約多項式のリストは次のページに跨がっているので、この画像上では不完全。)


この画像は、文中でも参考文献として引いた、下記の本の p.385 をスキャンしたもの:

[L&N1994] R. Lidl and H. Niederreiter, Introduction to finite fields and their applications (Revised edition), Cambridge University Press, 1994.
ISBN978-0-521-46094-1

めちゃめちゃいい本です。絶対、おすすめ。(?!)

---
2009-07-12T01:40 追記: もし、128bit または 256bit、512bit のシフトがすばやい CPU とコンパイラをお使いなら、(★を満たし、かつ)"簡単に" に求められるマジックナンバーはそれぞれ 18 通りまたは 16 通り、48通りしかない。それぞれ 1 つずつを挙げておくと、
0x0106147916753E87126D6F634BB9957F
0x008E25C0C93720ADACB0FB7AE886C79CC5A452A7767BF4CD460EABE509FE178D
0x0042309CAB0DE9B9142B4FD925BF26A6603194697F458EB2CF1F741ADBB05AFAA814AF2EE073A4F5D448670BDB343BC3FE0F7C5CC8253B479F362A471B571311
こんなの誰も要らない?
2009-07-12T03:49 追記: 誤ったところを直しました。既に見た方、ごめんなさい。

2009-07-07

Luhn algorithm

今日のニュースから:
カード番号割りだす「クレジットマスター」 窃盗容疑で21歳女を逮捕

クレジットカード番号に特殊な計算を施して他人のカード番号を割り出す「クレジットマスター」という手口で不正にインターネットで商品を購入したとして、大阪市の無職、旭千鶴被告(21)が窃盗容疑などで逮捕、起訴されていたことが7日、警視庁中野署への取材でわかった。同署によると、クレジットマスターによるカード犯罪の摘発は異例という。

同署は旭被告の交際相手で同市の無職の男(47)についても同容疑などの逮捕状を取る方針。同署によると、男の所在は現在不明という。同署が男の自宅を家宅捜索した際に覚せい剤が見つかっており、覚せい剤取締法違反(所持)容疑でも逮捕状を取る方針。

同署によると、旭被告と男は昨年7月20日、クレジットマスターで作成した他人のカード番号を利用し、都内のネット通販会社からテレビモニターなど計7点(約20万円相当)を購入した疑いが持たれている。(15:02)

[引用は NIKKEI NET より]

なんだか "特殊な計算" の "すごい手口" って扱いで、おおげさだなあ。(爆笑)

クレジットカードの番号は任意の数字の並びが有効なわけではない。最後の1桁がチェックディジットになっているため、ランダムに数字を並べたとしたら、その 1/10 以下しか有効ではない(「以下」と書いたのは、未発行や廃止があるため)。

カード番号がチェックディジットの意味で「有効」かどうかは、1960年に H. P. Luhn さんが特許を取った方法(Luhn algorithm)でチェックされていて、ネット上で既に公開されている。たとえば、ここ(英文)に詳しい記述があるし、探せば他にもいくらでもあるだろう。

ここで簡単に翻訳してしまう(念のため。違法行為でもなんでもないからね):
  • (1) 右から偶数番目の数字だけを
    0→0 1→2 2→4 3→6 4→8 5→1 6→3 7→5 8→7 9→9
    に置き換える。
  • (2) 数字の総和が10の倍数ならクレジットカード番号として「有効」である。
例えば、16桁の数字 1234 5678 9012 3456 は、

(1)を適用: 2264 1658 9022 6416
(2)で、総和は 2+2+6+4+1+6+5+8+9+0+2+2+6+4+1+6=64

となり、「有効」ではない。しかし、最後の1桁を2に変えた 1234 5678 9012 3452 なら総和は60で、「有効」ということになる。これは、暗算でできるんだけど、どこが "特殊な計算" なのかな?

---

そして、この事実は、カードのセキュリティとは関係ない

大したことではないのだ:ネット通販で買うとか、カードリーダーで読むとか、昔あった「複写紙でガッチャン」とかいう状況で、番号の読み間違い(入力ミス)があればその場でわかる、そのためのチェックディジットなのだ。名義人とか、有効期限とか、カードの裏に書かれているセキュリティコードとか、暗証番号とかがこれでわかるわけではない。

なんていうのかなあ。犯人には失礼だけど、とっても "DQN な手口" って言っちゃおうかな。通販は、送付先で商品を受け取らないといけないわけで、犯人を捕まえるの簡単。 DQN すぎて誰もやらない。だからこそ "摘発は異例" なんじゃないの?

というわけで、

「クレジットの明細書は、不正利用されてないかどうか、いつもよく見ましょうね」

というごくあたりまえの結論で終了でした。今回のエントリは、内容が全然ないね。ごめんなさい。(_o_)

2009-06-17

微分形式と熱力学

前回 2009-06-15 のエントリを書きながら、そういえば、昔、こんなことを考えてたなあ。と思い出した。

「熱力学に出てくるいろんな関係式は、微分形式で計算したほうが見通しがいい」

これは、たぶん分かってる人は分かってるが言ってもしょうがないから言わないだけ、というような類のことだ。実際、私が学生時代に使った教科書はどれも、そういう方法を採っていなかったし、先生もそんなことは言っていなかった。

でも、誰かの役にたつかもしれないので、念のために以下にデモンストレーションする。この blog では毎度のことだが、 数学的に and/or 物理的に どんなレベルの読者を対象にしているのかという設定は、全く不明だ。単なる自己満足なのさ。(笑)

---

まず、熱力学第0法則は「温度 」が well-defined であるという公理だ。

それを踏まえて、熱力学第1法則がある。これは、エネルギー保存則を要請することにより、自然に「エントロピー 」という状態量が定義できるという主張だ。正確には、[次元は2以上で単連結な、ある微分多様体上の] ある特定の 2-形式 (次式の左辺) が零である、という等式で定式化される:


(ここで、体積を 、圧力を で表した。)

☆式の左辺の 2-形式からは、非自明な、閉 1-形式が自然に4つ得られるが、

閉形式は完全形式である

という一般的な性質より、4つの 1-形式のそれぞれに、外微分で対応する 0-形式が (定数を除けば一意的に) 存在すると分かる。そこで、以下のように 0-形式の名前 (と記号) を定義する。
  • 内部エネルギー:
  • エンタルピー:
  • Helmholtz の自由エネルギー:
  • Gibbs の自由エネルギー:
4つの 0-形式 は、物理の語彙で言えば「自由エネルギー」(値の差にしか意味のない状態量) であり、その定義から、当然のごとく Legendre 変換を用いてお互いに移り変わることができる。変換の具体的な表式は、暗記する必要のあるような代物ではなく、
  •  
  •  
により明白だ。また、これらの自由エネルギーは、4通りの異なる情報を担うわけではなく、同一の内容(☆)を表現しているに過ぎない。つまり、これら4つの 0-形式の外微分が上記のそれぞれであるという定義そのものが、 により、「エネルギー保存則」を表す☆式と等価なのだ。

便利な座標系を選んで計算しましょう という、それだけのこと。

上の式たちが 1-形式だと思っていれば、たとえば、


などは、あたりまえ 以外の何物でもない。また 0-形式 の2階偏導関数を考えれば、いわゆる「マックスウェルの関係式」と言われるものたちも簡単に導ける。

他にも、熱力学と統計力学の橋渡しとして重要な「ギブス-ヘルムホルツの関係式」といわれる式


を、偏導関数たちから導出しようとすると目がチカチカしがち。けれども、微分形式の計算として、


を得るのは、 で表すという方針がはっきりしているから、暗算でできるレベルだ。

---

以上、書くだけ書いてみた。難しいことも、憶えなきゃいけないことも、何にもない。あ、☆の式 1つだけは憶えるほうがいいかなあ。

でも、今回の内容に関して、質問や議論は受け付けません。こういう内容だと、変な論争を仕掛けてくる分かってないマニアがいたりするのだが、ごめんなさい、あっさり 削除 or シカト(メールは迷惑フィルター) しますので勝手にお気を悪くなさらないように、と警告しておく。内容の無い、哲学みたいな話は、けっきょく、他人と話して楽しいことが稀。

微分形式の勉強してねっ、の一言。(笑)